検出部の大きさと磁束密度測定精度の関係
ここではプローブ先端の検出部の大きさが、測定精度にどれだけ関わってくるかを検証してみます。
テスラメータの校正は一様な磁界の中で行われます。
左上図は校正に使われる代表的磁界発生器であるヘルムホルツ・コイルの磁力線の分布を示しています。
右上写真はTMD−1、WT-2000で使用しているホールセンサの切断面を示しています。
左上図で複数の磁力線が平行に走っているエリアでは、磁束密度は一様です。
ヘルムホルツ・コイルは同じ大きさ・巻数の二つの環状のコイルをその半径分だけ離して配置したコイルで、
中央部の磁束密度は非常に良く揃っています。
このような理想的な環境では、検出部の大きさに関わらず正確な測定ができます。
では次に、身のまわりの磁石のような実際の測定対象物を測るときのことを考えてみます。
たとえば棒磁石を考えると、その磁力線の分布は子供のときに学んだ砂鉄の描く模様と同じです。
磁極の付近では磁力線は大きく広がっており、これは磁極から離れると
急速に磁束密度が低下することを示しています。
理論的には磁極の付近では(距離+α)の2乗に反比例して磁束密度は低下し、
磁極からの距離が大きくなると3乗に反比例することになります。
上の図は、長さ15mm幅1mmの長細い鉄片を磁化させて、その磁極の面からの距離とテスラメータの
測定値との関係をグラフにしたものです。
TMD−1, WT-2000 のホールセンサは実際の検出部が表面から0.3mmの位置にありますので、
密着状態のデータを0.3mmの位置にプロットしています。
距離が大きくなると急激に測定値が小さくなることが分かります。
つまり、
測定対象物よりもずっと小さなセンサで測定しないと誤差が大きくなる
ということになります。
0.3mmという値は例えばこれが1mmの測定器に比べれば真の値に寄った3倍近く大きな値を示します。
しかし、このグラフからも(15mmの棒状の部品の測定をするためには)まだ充分とは言えないことが読みとれます。
因みに、この例では真の値は11mT程度と推定されます。特に細長いために誤差が大きくなり易いくなっています。
対象物の縦横の比の小さい(丸っこい)ものの方が誤差は小さくなります。